明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『生首御殿』 山田旭南

1910年(明43)小宮万次郎刊。おどろおどろしいタイトルから想像すれば怪談話だろうと思われたが、読み始めて江戸の剣術物だとわかった。雪の夜に軒先で行き倒れで死んだ巡礼女が抱いていた赤子を老夫婦が引き取って育てる。大きくなるにつれ、教えもしないのに剣術の真似事をするようになり、老道場主のもとで成長し、達人となる。物語の語り口は噺家のように滑かでリズムがあって心地よい。前半は道場主の娘をめぐる身柄の争奪戦、後半が掛川藩の領主の弟の屋敷で行われる悪辣な行状を諫める話になる。この作者旭南(きょくなん)には話のやり取りの口上を丁寧に書き綴る特長があり、その問答に迫真感があった。味読して楽しめた。☆☆☆☆

 

国会図書館デジタル・コレクション所載。口絵は山本研山。

dl.ndl.go.jp

 

 

 

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