明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『金貨:探偵奇談』 岡本綺堂

 

1912年(大1)今古堂刊。かつて愛読した「半七捕物帳」の作者岡本綺堂は40代以降に精力的に作家活動に入った。「半七」を生み出す前には探偵物や怪奇物を書いていた。この作品は米国の映画のノベライズ物だが、序文を見る限りシナリオから翻訳して読み物にしたようだ。当然ながら当時の無声映画の場面の説明は目まぐるしく展開する。本来劇作家でもあった綺堂なので、プロットの暴走も飛躍もコントロールしながら彼らしい明瞭な文体で綴っている。映画では小さく穴の開いた金貨がキーワードらしいが、必ずしもそれがなくとも事件は自白や悔悟で解決している。☆☆

 

国会図書館デジタル・コレクション所載。口絵は常三という画印があるが不詳。

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