明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『三怪人』 江見水蔭

 

1914年(大3)樋口隆文館刊。前後続終の全4巻。外見的には大長編になるのだが、江見水蔭の場合には等しく「娯楽活劇映画」を見るような面白さと軽さが味わえる。北アルプスの山中の苗名の滝で偶然出会った三人の怪しい人物たちは各々、児雷也大蛇丸綱手という講談上の仮の名前を名乗る。綱手は美人女賊のお俊であり、傷心の旅にあった児雷也・緒方雪彦と互いに騙し合いながらも親密になって行く。当時一世を風靡していたフランス映画「怪盗ジゴマ」のやり口をそのまま日本に移植させた怪盗エックス(X)は警察の手配網を手玉に取る凶行を各地でくり広げる。彼の名前も正体も大蛇丸以外は最後まで不明のままとなる。他に引退した名探偵の眠翁の復帰やその娘の誘拐など手に汗握る活劇が、黒姫山以外にも房総の鋸山、鵠沼海岸、伊東の潮吹岩などを舞台に展開する。☆☆☆

 

 

国会図書館デジタル・コレクション所載。口絵は八幡白帆。

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