明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

江見水蔭

『恋の魔術』 江見水蔭

恋の魔術:江見水蔭1 1919年(大8)樋口隆文館刊、前後終全3篇。 大正期のロマン伝奇小説。江見水蔭の軽妙な筆運びがグイグイ読ませてくれる。甲州韮崎から山奥に入ったラジウム鉱泉の星飛村が冒頭の舞台。山歩きで遭難しかけた青年が這う這うの体で一軒の…

『荒鷲の爪痕』 江見水蔭・万代山影・共著

荒鷲の爪痕:江見水蔭 1905年(明38)青木嵩山堂刊。 江見水蔭の文学結社江水社に加わっていた万代山影(本名・英五郎)との共作となっている。栃木市の女学校で学ぶ仲良しの二人の令嬢が遠足で大平山に登った時、大鷲に襲われて一方の澄子は顔に傷を負い、…

『迷宮の鍵:探偵情話』 江見水蔭 

迷宮の鍵:江見水蔭 1923年(大12)博文館刊。 江見水蔭(1869~1934) は硯友社の門人で、明治期での多作家の一人とされている。「はしがき」にもある通り、日本で最初に「探偵小説」(犯人探しの)を書いたようだ。この本には「芸妓殺し」の中篇をはじめ、他…

『古塔の影』 江見水蔭

1922年(大11)樋口隆文館刊。軽い筆致で小説を量産した江見水蔭の晩年の作品ということだが、なぜかこの作品だけはインターネットに公開されておらず、個人送信に限定していた。 物語の舞台は入間市近郊の丘陵一帯、昔朝鮮から渡来した高麗人たちが集落を構…

『鏡と剣』 江見水蔭

1913年(大2)嵩山堂刊。前後2巻。江見水蔭の作品はこれまで活劇風の軽いノリのものを読んでいたが、これは少々異なった。母を亡くして後、気性の合わない継母との生活に苦しみ、家を出た10代の少年は銚子の漁村に住む乳母の許を頼るが、大人たちの貧しく醜…

『三怪人』 江見水蔭

1914年(大3)樋口隆文館刊。前後続終の全4巻。外見的には大長編になるのだが、江見水蔭の場合には等しく「娯楽活劇映画」を見るような面白さと軽さが味わえる。北アルプスの山中の苗名の滝で偶然出会った三人の怪しい人物たちは各々、児雷也、大蛇丸、綱手…

『夜の蜘蛛』 江見水蔭

1926年(大15)樋口隆文館刊。三分冊のものを10日ほどで読んだ。江見水蔭は明治大正期の流行作家で、文学史上は無名だが当時は人気があったようで数多くの作品が出版されていた。速い場面展開と軽いタッチで、文体も現在の書き言葉とほぼ同じになっていて…