明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『遠山の金さん』 山手樹一郎

1961年(昭36)講談社刊、山手樹一郎全集 第29巻

 

「遠山の金さん」とは、後に遠山金四郎景元として江戸北町奉行および南町奉行などを歴任した人物。柳橋の船宿相模屋の二階に居候する遊び人の金さんはもともと旗本の次男坊の身の上だが、家を飛び出して町人として勝手気ままな生活を送っている。山手樹一郎は長期のシリーズ物として金さんの若き日の行状記という体裁を取っている。この巻では雑誌連載の毎回一話完結で全22話を収めているが、この後も書き続けられ、「遠山政談・江戸ざくら」や「金四郎桜」まで出ている。

恋仲の看板娘お玉とのやり取りや福井町の岡っ引重五郎が持ち込む事件の謎解きが中心で、作者の安定した筆致を毎日一話読み通す味わいは、生活習慣的な快さでもあった。☆☆

 

国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。

https://dl.ndl.go.jp/pid/1667703

「小説倶楽部」1967年2月の新春大増刊号に単発で再録された「拗ね小町」の挿絵は中一弥。お玉の膝を枕に昼寝する金さんの場面は何度も出てくる。

遠山の金さん5

《遊び人になって賭場へ出入りして、はじめて血眼になって金を争っている様々な人間の顔が、地獄へでも遊びにきているようで、こんな世界もあったのかなぁと、ちょいと物珍しかったが、どこまで行っても奪(と)った奪(と)られたの二つしかない外道(げどう)の世界だから、金に慾のないかぎりこのごろではただ馬鹿らしいだけで、そう大した興味も持てなくなってきた。》(真夏の夜の夢

 

 

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