明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『犯罪の足音』 岡田鯱彦

犯罪の足音:岡田鯱彦

1958年 光風社刊。

1963年 青樹社刊(青樹ミステリー)

 

岡田鯱彦(しゃちひこ)は国文学者で、古典に題材を求めたミステリー作品もある。これは戦後期に書かれた現代物の一つである。

結核に感染した大学一年生の青年が、病後の療養のために南伊豆の突端にある小さな漁村の旧家の離れに居候として滞在する。三度の食事などは旧家の若妻の世話になるが、その夫というのは親子の歳の差がある老人だった。青年は彼女にほのかな恋情を抱くが、彼女の身辺では次々に人が亡くなるという出来事が起きる。青年は療養の日々の徒然に事件の推理を試みるが、素人じみた発想しかできない。風光明媚な背景を思えばタイトルが陳腐過ぎた。年上の若妻への恋情の推移をもっと掘り下げられれば味わいが出たようにも思う。☆

 

国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。

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