1953年~1955年(昭28~30)雑誌「読切倶楽部」に連載。
「からす堂シリーズ物」の第2巻。「鬼小町」、「死相の殿様」、「比丘尼変化」、「江戸の兇賊」の4中篇を収める。各篇とも雑誌には4回から長くて7回にわたって連載となった。半年以上も待たされた当時の読者はさぞ待ちくたびれたことだろう。毎回前号までのあらすじが載っていた。
からす堂がお紺の店に毎日昼食を食べに来るようになって、彼女は嬉しいのだが、まだ夫婦になれないもどかしさから、あれこれ思いを巡らせる女性心理が描かれる。あからさまに語ってははしたないとされる女の情熱、欲情、あるいは独占欲や嫉妬心など、物語のきっかけにもなるのが自然に読めて面白い。「比丘尼変化」は岡本綺堂を思わせる怪異譚風因縁話で印象深いものがあった。☆☆☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。挿絵は木俣清史。
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