明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

戦後昭和期

『からみ合い』 南条範夫

からみ合い:南条範夫 1959年(昭34)7月~12月、雑誌「宝石」連載。 1959年(昭34)光文社、カッパ・ブックス。 1973年(昭48)講談社、現代推理小説大系 16巻 所収。 1981年(昭56)徳間文庫刊。 巨額の遺産相続をめぐる人間模様を描く、しっかりと構成さ…

『悪霊の群』 山田風太郎・高木彬光 合作

悪霊の群:山田風太郎&高木彬光 1956年(昭31) 大日本雄弁会講談社刊。 これは珍しい山田風太郎と高木彬光の合作推理小説だった。作家が一人だけで書き上げるのとはかなり勝手が違ってくるので、感覚的にはもどかしい点もあっただろうと思う。登場人物の使…

『裸女と拳銃』 鷲尾三郎

裸女と拳銃:鷲尾三郎 1956年(昭31)3月~5月、新聞「内外タイムス」に連載。原題は『地獄の神々』 1959年(昭34)同光社刊。 1959年(昭34)春陽文庫。 この作品は1958年に日活で映画化されたときのタイトルが「裸女と拳銃」であったため、以後の刊行では…

『薔薇夫人』 竹田敏彦

薔薇夫人:竹田敏彦 1952年(昭27)向日書館刊。 1957年(昭32)東方社刊。 旧華族の邸宅を買い取って高級中華料理店「薔薇園」を営む女主人の葉山貴志子の謎めいた行動が興味を引く。しかしながら物語はいきなり戦前の中国に舞台を移す。青島で日系のマッチ…

『池田大助捕物日記』 野村胡堂

池田大助捕物日記:野村胡堂 1953年(昭28)同光社磯部書房刊。11篇所収。 1952年(昭27)雑誌「読切倶楽部」一部掲載。 野村胡堂と言えば「銭形平次捕物帳」が代名詞のようになっているが、その外に「池田大助」の捕物帳のシリーズがある。この池田大助も…

『不思議な巷』 大河内常平

不思議な巷:大河内常平 1956年(昭31)あまとりあ社刊。 大河内常平(おおこうち・つねひら、1925~1986)は探偵作家として戦後の10数年間のみの活動しかなく、あまり記憶に残る大作もなかったので忘れ去られている。これは初期の短編10作を集めたもの…

『破魔弓伝奇』 土師清二

破魔弓伝奇:土師清二 1939年(昭14)12月~1940年(昭15)5月、読売新聞夕刊に連載。 1956年(昭31)東方社刊。 1958年(昭33)雑誌「小説倶楽部」に縮約版を掲載。 江戸中期に勤皇思想を鼓吹した儒学者山県大弐の疑獄事件を絡めて、由井正雪の子孫を自認す…

『ミイラの招待』 戸川幸夫

ミイラの招待:戸川幸夫 1958年(昭33)和同出版社刊。 動物文学者としてのほうが有名な戸川幸夫(1912~2004)は戦後昭和期に幅広い分野で作家活動を行った。この作品は探偵活劇仕立てになっている。 東京の奥多摩にある日原鍾乳洞を見学に行った仲良し三人…

『切れ長の眼』 田村泰次郎

切れ長の眼:田村泰次郎 1958年(昭33)和同出版社刊。 1958年(昭33)2月、雑誌「小説倶楽部」に『昼間の女』を掲載。 1958年(昭33)6月、雑誌「小節倶楽部」に『夏の花』を掲載。 1958年に雑誌「小節倶楽部」や「小説新潮」に掲載された連作風小品をまと…

『遠山政談・金四郎桜』 山手樹一郎

金四郎桜:山手樹一郎 1957年(昭32)1月~1958年(昭33)7月、雑誌「小説倶楽部」連載。 1958年(昭33)桃源社刊。 いわゆる「金さん」もの。江戸町奉行として歴史に名を残す遠山金四郎が青年時代に家を飛び出して、町屋に住み、遊び人として賭場に出入りし…

『美しき果実』 十和田操

美しき果実:十和田操 1947年(昭22)3月~1948年(昭23)5月、雑誌「令女界」連載。 1948年(昭23)、真光社刊。 美しき果実:十和田操、三芳悌吉・画1 終戦直後、大陸からの引揚者たちの群れの中に幼い男の子を連れた若い娘がいた。彼女の名前は美雨(ミグ…

『タケノコ夫人行状記』 宇井無愁

タケノコ夫人行状記:宇井無愁 1955年(昭30)和同出版社刊。 宇井無愁(うい・むしゅう、1909~1992)は戦後昭和期の大阪の劇作家および小説家。筆名がフランス語の「ウィ、ムッシュー」(Oui, Monsieur.=はい、旦那様)から来ているのは誰でもわかる。主に…

『浅香主水捕物帳』 佐々木杜太郎

浅香主水捕物帳:佐々木杜太郎 1953年(昭28)春陽堂書店刊。捕物小説全集の内の一つ。全17篇。 1949年(昭24)2月、雑誌「富士」に「伝七油地獄」を掲載。 1951年(昭26)桃源社刊、捕物小説傑作集に「心中富士講」を所収。 佐々木杜太郎(もりたろう、1906…

『殺人環状線』 島田一男

殺人環状線:島田一男 1956年(昭31)東方社刊。 1956年(昭31)1月、雑誌「小説倶楽部」に「東京犯罪地図」を掲載。 1961年(昭36)春陽文庫刊、表題を「信号は赤だ」に変更。 新宿警察署の中老の庄司部長刑事(デカチョー)とその部下たちの活躍を描く7篇…

『旅人の喜び』 庄野潤三

旅人の喜び:庄野潤三 1956年(昭31)6月~1957年(昭32)3月、雑誌「知性」連載。 1963年(昭38)河出書房新社刊、Kawade paper backs, 28 戦中期の女学生の体験を思い出しながら、戦後の復興期を一家庭の主婦として生きる貞子の目を通して綴られる日常風景…

『犬姫様』 陣出達朗

犬姫様:陣出達朗 1951年(昭26)9月~1952年(昭27)6月、雑誌「小説倶楽部」連載。 1954年(昭29)文芸図書出版社刊。 1958年(昭33)同光社出版刊。『鞭を鳴らす鬼姫』と改題。 犬姫様:陣出達朗、成瀬一富・画 江戸城大奥の中臈夏乃が所有する満月丸とい…

『緋鹿子捕物草紙』 村上元三

緋鹿子捕物草紙:村上元三 1951年(昭26)新小説社刊、新小説文庫(第109、110)全2巻。 1951年(昭26)桃源社刊、捕物小説傑作集に「まぼろし燈籠」を所収。 1953年(昭28)文芸図書出版刊。『夜叉頭巾ーお吟捕物秘帖』と改題。 これも女捕物帳の一つで、…

『お七と吉三』 舟橋聖一

お七と吉三:舟橋聖一、岩田専太郎・画 1946年(昭21)7月~9月、雑誌「りべらる」連載。 1955年(昭30)河出書房刊、大衆文学代表作全集第4(舟橋聖一集)所収。 恋慕する寺小姓の吉三郎に会いたい気持が高じて放火事件を起こし、処刑された八百屋お七の史…

『男をチチル五人の娘』 志智双六

男をチチル五人の娘:志智双六、田中比左良・画 1951年(昭26)6月~12月、雑誌「富士」連載。 志智双六(しち・そうろく, 1902~1983)についても前回書いた棟田博と同様に、その経歴に関する情報がネットでは見つからない。戦中に書いた「兵隊もの」が古書…

『韋駄天弥ン八』 棟田博

韋駄天弥ン八:棟田博 1950年(昭25)4月および6月、雑誌「富士」掲載。 1956年(昭31)東方社刊。 棟田博(1909~1988)は今ではほとんど忘れ去られた作家の一人と思われる。戦中期に従軍中の体験を書いた「兵隊もの」の作品で人気を得て、除隊後は従軍作家…

『紅太郎捕物帳』 土師清二

紅太郎捕物帖:土師清二 1948年(昭23)高志(こし)書房刊。 1951年(昭26)桃源社刊。 土師清二は昭和初期から戦中、そして戦後にかけて息の長い作家活動を続けた。特に戦後の捕物帳ブームの火付け役となった捕物作家クラブの副会長として(会長は野村胡堂…

『鹿鳴館』 富田常雄

鹿鳴館:富田常雄 1946年(昭21)8月~11月、雑誌「りべらる」連載。 1951年(昭26)講談社刊、「猿飛佐助」(講談社評判小説全集第5)所収。 1955年(昭30)平凡出版刊、「薔薇の紘道館」(平凡映画小説シリーズ)所収。 1964年(昭39)双葉社刊、「明治の…

『虹は消えない』 大庭さち子

虹は消えない:大庭さち子 1950年(昭25)1月~12月、雑誌「富士」連載。 これもNDLデジタルで戦後雑誌(一部)の閲覧・通読が可能となって読むことができた作品だった。大庭さち子(1904~1997)は戦中期の作品もあるが、戦後特に少女小説の分野で旺盛に活…

『振袖地獄』 角田喜久雄

振袖地獄:角田喜久雄 1955年(昭30)1月~12月、雑誌「小説倶楽部」連載。 1955年(昭30)同光社刊。 振袖地獄:角田喜久雄、志村立美・画 作者の得意とする「伝奇物」の一つと言ってしまえば簡単だが、「過ぎたるは及ばざるが如し」というのか、「奇」をて…

『バス通り裏』 筒井敬介・須藤出穂

バス通り裏:筒井敬介・須藤出穂 1959年(昭34)くろしお出版刊。 戦後のテレビ放送初期の頃制作された連続ホームドラマの小説化本である。放送は1958年4月から丸5年間の長期にわたり、当時は絶大な人気を博していた。小説化は放送開始後1年半での1冊のみ…

『世界風流艶笑譚』 石井哲夫(風流隠士)

世界風流艶笑譚:石井哲夫 1950年(昭25)4月~1951年(昭26)12月、雑誌「富士」連載。 1955年(昭30)妙義出版刊。(スマイル・ブックス) 世界風流好色譚:沢田正太郎・画1 当初「富士」連載のタイトルは『世界風流好色譚』となっていた。好色譚という面…

『清吉捕物帖』 三好一光

清吉捕物帖:三好一光 1951年(昭26)同光社刊。全12篇。 1950年(昭25)4月、雑誌「富士」掲載「辰巳八景」清水三重三・画。 1951年(昭26)3月、雑誌「富士」掲載「仁王の怒り」佐多芳郎・画。 1951年(昭26)5月、雑誌「富士」掲載「地獄のたより」馬場…

『三尺の墓』 高木彬光

三尺の墓:高木彬光 1958年(昭33)東京文芸社刊。 1961年(昭36)12月、雑誌「小説倶楽部」臨時増刊号に「三尺の墓」のみ再掲載。 高木彬光の生み出した探偵のうち最も有名なのは神津恭介だが、別の私立探偵、大前田英策の活躍する作品も少なくない。大前田…

『地獄ごよみ』 山手樹一郎

地獄ごよみ:山手樹一郎 1954年(昭29)桃源社刊。「江戸恋い双六」という副題がついている。 1959年(昭34)2月~1960年(昭35)3月、雑誌「小説倶楽部」連載。 幕末期の江戸の大店の遺産相続をめぐる連続殺人サスペンスという異色作。直参旗本の次男坊の鶴…

『鏡屋おかく捕物帖』 土師清二

鏡屋おかく捕物帖:土師清二 1954年(昭29)同光社刊。 1956年(昭31)同光社刊。同内容だが書名は『お千代舟の女』に変えて出版。 1955年(昭30)鱒書房刊、「捕物小説集第1」に「紅勘殺し」を所収。 1961年(昭36)12月、雑誌「小説俱楽部」臨時増刊号に…