明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『詩と暗号』 木々高太郎

詩と暗号:木々高太郎東郷青児

1947年(昭22)新太陽社刊。

 

 終戦直後の雑誌「モダン日本」に連載されたという連続探偵小説と銘打った8篇からなる。何らかの理由から医師としてではなく、理科系の教師として信州と思われる田舎町の高等女学校の教師として赴任した藤村章一郎の探偵譚。終戦直後の女子高生たちの姿は新時代の自由思想の風潮を反映してすがすがしく美しく描かれている。事件としては教師や生徒の間でのちょっとした出来事を掘り下げる程度だが、単なる謎解きではなく、その背景にある心情への細かな洞察や、田舎の四季の移り変わりの風景を詩情豊かに描いていて、文芸的な味わいがあった。☆☆

 

詩と暗号:木々高太郎三芳悌吉

国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。

https://dl.ndl.go.jp/pid/1133470

表紙絵は東郷青児、挿絵は三芳悌吉。いずれも趣きがある。

 

詩と暗号:木々高太郎三芳悌吉

《私は人生を果敢(はか)なむと言ふ時に、人は二つの態度のどちらかになるやうに思ふのでございます。それに反発して、死を選ぶやうな人と、どうでもいゝ、一番大切のものが失はれたとなれば、あとはどうでもいゝと考へる人と――二つがあるのではないかと思ひます――》(六、降誕祭の雪)

 

 

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