明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『美少年録:立志鳳鑑』 菊亭静

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1887年(明20)イーグル書房刊。ここでの「美少年」とは「好青年」のような概念であり、いわゆる「美男子」ではない。秩父の山村で育った2人の少年が東京に送り出されて高等教育を受けるが、一方は堅実に勉学に打ち込み、もう一方は怠惰で無軌道な生活を送る。それぞれの個性はもとより、家庭での教育のし方の差異が人格形成へ大きな影響を及ぼすことを物語として説いている。しかし教訓話というわけではなく、同じ下宿に起居する仲間の学生たちの生態も描いていて面白い。ちょうど同じ年に坪内逍遥が『当世書生気質』を発表しており、図らずも類書を先に読むことになった。ダメ息子が最後には僧職で身を立てる更生談も含め、学生たちの人生の浮沈模様を描いていて興味深く読めた。☆☆☆

 

国会図書館デジタル・コレクション所載。口絵は小林襲明。

dl.ndl.go.jp

 

《乃(すなは)ち「少年をして善良の性を養成せしむには如何の教育に拠るべき乎」「世の父母たるもの如何せば善良の子弟を得べき乎」の二問題に付て詳細の解釋を叙述せしものなり》(緒言より)

 

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