明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『江川蘭子』 江戸川乱歩・他5人の合作

江川蘭子:江戸川乱歩 他5人

1931年(昭6)博文館刊。(頁の損耗および落丁あり)

1947年(昭22)探偵公論社刊。

 

長篇連作探偵小説と銘打ってのリレー形式の作品。①江戸川乱歩、②横溝正史、③甲賀三郎、④大下宇陀児、⑤夢野久作、⑥森下雨村という昭和初期の第一線で活躍したミステリー作家たちの競演、という企画だけでも興味が惹かれた。カバー画像は終戦直後に復刊された探偵公論社のものだが、昭和初期のものよりも紙質も印刷も劣り、戦争によっていかに日本が窮乏していたかがわかる。

両親を惨殺された現場で生き残った乳児として、老夫婦によって育てられた蘭子は、持ち前の美貌と優れた知能を備えながらも、感情を極限にまで昂らせる刺激を追い求める性向を持っていた。彼女の生きる航跡を次々に作家たちが引き継いで行くのだが、その異常な背徳と悪行を描き続けることに嫌悪感や厭世感まで催させた先には空っぽな虚無感を覚えた。☆

 

江川蘭子:江戸川乱歩 他5人

国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。

https://dl.ndl.go.jp/pid/1170672/1/3

https://dl.ndl.go.jp/pid/1648874

戦後刊の表紙絵および挿絵は村上正夫。



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