明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

渡辺黙禅

『封人窟』 渡辺 黙禅

封人窟:渡辺黙禅1 1915年(大4)樋口隆文館刊、前後終編全3巻。 明治大正期の長篇小説の大家の一人、渡辺黙禅の一作。新聞小説を各紙に何本か掛け持ちで連載していたらしく、同じ年に単行本として何点もの長篇(2分冊、3分冊)を出していた。作風は多数の…

『江戸ざくら』 渡辺黙禅

1919年(大8)大川屋書店刊。みやこ文庫第16篇~第17篇『後の江戸ざくら』全2巻。大政奉還から明治維新にかけての近代日本における大変革期を生きる人々の生き様を描いている。武家社会の崩壊は俸禄という経済基盤を失うことで多数の士族や雇人たちが路頭に…

『匕首芸妓』 渡辺黙禅

(あいくちげいしゃ)1911年(明44)樋口隆文館刊。前後2巻。前半は華族令嬢一行4名の旅行客と見せかけた詐欺窃盗の一味の鮮やかな犯行と逃避行を塩原・那須の風光明媚な景勝描写とともに描いている。しかし後半は秩父困民党事件での実在した人物たち(田…

『横山花子』 渡辺黙禅

1913年(大2)樋口隆文館刊。前後2巻。前に読んでいた「千里眼」の後日譚である。幼児だったヒロインの花子が花も恥じらう19歳の娘に成長している。母親譲りの美貌が災いして強欲な実業家一味に何度もかどわかされそうになる。結局彼女は、その身上の転変や…

『千里眼』 渡辺黙禅

1913年(大2)樋口隆文館刊。前後続の全3巻。明治改元直後2~3年の社会制度の定まらない混乱期における、新橋の美人花形芸者梅吉とその一子花子の波乱万丈の物語。タイトルの「千里眼」は花子に備わる透視能力のことを指すつもりだったが、この3巻ではま…

『魔の笛』 渡辺黙禅

1919年(大8)樋口隆文館刊。前後続篇の全3巻の長編小説。オランダ植民地下のインドネシアのバタビヤ(現ジャカルタ)が主な舞台。妖艶な美人魔術師ジャグラー京子と現地でゴム園経営を失敗した日本人青年甘露寺滋との恋愛模様を挟みながら、日本領事一家と…

『怪の怪』 渡辺黙禅

1910年(明45)樋口隆文館刊。前後2巻。渡辺黙禅を続けて読むことになった。華族の黒石子爵の屋敷での強盗殺人事件が発端となる。駆けつけた2人の警察官も殉職するという凶悪事件ながら警察の捜査は難航する。跡取息子の游蕩に加え、家宝の工芸品が秘かに…

『女獅子』 渡辺黙禅

1812年(明45)樋口隆文館刊。正編、続編、続々編の全三巻。明治後期の新聞記者が謎のハイカラ女性から話を聞くという体裁の枠物語で始まる。話は一気に、外国船に蹂躙される幕末の対馬の漁村に飛ぶ。作者渡辺黙禅(もくぜん)は当時人気作家の一人とされ、…