1890年(明23)明進堂刊。黒岩涙香がフランスの流行作家ボアゴベ(Boisgobey)の作品「他言無用」(Bouche cousue)から抄訳し、登場人物を日本名に、また環境設定を明治の日本に置き換えた翻案物の一つ。隣室での殺人現場を覗き見した女性に対する悪人たちからの脅迫や口封じが物語を大きく左右する。
原作は新聞小説だったため、かなり冗長な個所が多いので、それを短略化し、テンポを速め、語り口に勢いを出した涙香の手腕は見事だ。☆☆☆☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。挿絵は数カ所に入っているが無署名のため不詳。歌舞伎の仕草を思わせる。
*参考サイト:atakaの趣味悠久
黒岩涙香「悪党紳士」(2)(2014.06.30)
https://blog.goo.ne.jp/wtn1948/e/932f1c39297cd0739a501d296130ef49