(まんげつじょうひもん)1955年(昭30)偕成社刊。山岡荘八は「徳川家康」を始めとする歴史小説の大家だが、その他の作品、特に少年少女向けの歴史物も少なくない。これも青少年向けの偕成社刊行による単行本の一つで、10代の少年少女を主人公とする時代物の冒険譚になる。町道場で武術を修練する娘が、ふとしたことで信州の領主の姫君の身代りとなって、怪奇と陰謀渦巻く城に乗り込んで行く。年少者が大人たちと対等に勝負しえない非力さは読者の側としても承知せざるを得ないが、互いの協力や工夫や偶然でそれを克服していくところが要点となる。終戦直後の時代には映画も隆盛を極めたが、その娯楽時代劇を連想させるような単純明瞭な筋の組立てだった。☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。
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挿画は木俣清史。