1957年~1958年(昭32~33)雑誌「読切倶楽部」に連載。
1958年(昭33)桃源社刊。
「からす堂シリーズ」の第4巻。「千人目の春」から続く「新妻道中」の長篇を収める。互いに親しくなって二年以上になるお紺とからす堂だが、観相で千人の人助けをする大願成就までは結婚できないでいた。そしていよいよ千人目という時に、からす堂は密命を受けて三島まで旅に出ることになり、ついでにお紺を同伴することにして慌ただしく祝言を挙げる。東海道中の先々での小事件を解決しながらの旅となる。手相・観相による予言じみた託宣がよく当たり過ぎるのも読者には次第に鼻につくようになる。目的地の御家騒動も二三日で解決するのもあっけない。無理やり同伴させたようなお紺が誘拐されるパターンも作為的。雑誌では超人気の連載だったが、馴れ合いを感じた。☆☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。挿絵は木俣清史。
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https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1669073
『いや、神さまというものは敬うものであって、願掛けをしたり物をたのんだりするものじゃない。願掛けは自分の心にするものだ。つまり神の前でわが心に誓う、それでいいんだ。神さまに物をたのんでおいて、自分の心が怠っていたんではいくら神様だってどうしようもないからな。』(三島の宿)