明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『隠れた手』 甲賀三郎

 

1957年(昭32)東方社刊。甲賀三郎(1893-1945) の中篇集。表題作『隠れた手』と『血染の紙入』の二作を読んだ。前者は一流ホテルの客室に闖入した青年が見聞きした殺人事件のトリックの謎解きだが、時間軸の中に偶然が組み込まれる「あり得なさ」を感じた。後者のほうが筋立てにひねりが入ったサスペンス仕立てで、読むのに引き込まれた。犯人側の連続的な犯行の手際の良さが目立つ。捜査の主役が個人名ではなく、あくまでも職名「刑事課長」だけで終始するのは特異でもあり、没個性的で共感が薄いままとなった。「警視総監」「警視総監夫人」も登場するが名前が出ないとどうしても印象も軽くなる。☆

 

国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。

https://dl.ndl.go.jp/pid/1646132

 

 

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