1952年(昭27)湊書房刊。
1950年(昭25)9月~1951年(昭26)12月、雑誌「婦人生活」連載。
独身で吝嗇家の叔父が多額の財産を残して死去した。平凡なサラリーマンの青年は相続人となったが、ある見知らぬ女性との結婚が前提条件とされていた。その女性探しと金目当ての策略とが大阪の街に繰り広げられる。設定はまるで英米のロマンス映画を思わせる。文体は平易で、筋立ても巧妙で、読んで楽しめた。出てくる女性がどれもなかなかの美人という設定は現実離れしているが、大衆受けしたようで、当時大映で映画化されている。☆☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。
https://dl.ndl.go.jp/pid/1352961
https://dl.ndl.go.jp/pid/2324875/1/24
単行本の装幀と表紙絵は伊藤悌二。雑誌連載時の挿絵は田村孝之助。
《その美しい千草の前に出ると、自称悪魔主義者の望月兇之介ともあろう海千山千の男が、なぜか眩しい光に当てられたように、変に意気地なくなってしまうのだ。この娘だけは、いつまでも清潔な花として、そっとして置いてやりたい、と言った惻隠の情さえ起って来るのだ。》(二つの構図)