1951年(昭26)4月~1952年(昭27)4月、雑誌「婦人生活」連載。
1954年(昭29)北辰堂刊。
抽象画を学ぶ画家の卵の青年とその友人の哲学科の学生、その妹のフランス語教師、そして音大生を目指す娘という男女二組を中心にした恋愛模様を描く。兄妹を除けば三通りの恋愛の可能性があるが、特に画家の青年に対する二人の女性の恋愛心理の対立と変容で、結果的にどれも成就しなかったのは男性側の進路の不確定さにあるように思う。煮え切らない態度の反復で物語が終始するパターンは純文学的と言えるかも知れないが、面白味に欠ける。ヒロインの一人が修道院に入るという結末は、現実逃避にしか見えなかった。☆☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。
https://dl.ndl.go.jp/pid/2324876/1/26
https://dl.ndl.go.jp/pid/1643569
雑誌連載時の挿絵は下高原健二。