1930年(昭5)大日本雄弁会講談社刊。
都心のビル街に美術商を騙って妙齢の美人姉妹を次々と篭絡する謎の怪人蜘蛛男。その手口は猟奇的な乱歩の世界そのものだが、作中に言及されるように欧州の怪奇童話「青髭」に似通った陰惨な罪業も見える。警察と犯罪研究の畔柳博士による追跡劇は、怪人の驚異的な動きと巧みなトリックで読者を驚かす。後半にやっと明智小五郎が登場する。怪人の最後の大舞台は、映像化されたならエロ・グロ過多で、昭和初期でもよく発禁にならなかったものだと思われた。☆☆
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表紙絵および挿絵は田中比左良。