1954年(昭29)6月~1955年(昭30)1月、東京日々新聞連載。
1955年(昭30)同光社出版刊。
自分の育った郷里の歴史上の事件として有名であり、見過ごせないと思っていた。事件を取り扱った類書は数多あって、山本周五郎の「樅ノ木は…」や村上浪六の「原田甲斐」などにも手をつけたが、読み通すことはできなかった。複雑な利害関係もからんで、悪玉と呼べる人物はいないとされる物語を、今回ようやく読むことができた。史実に忠実ではないものの、その要素を作者なりに再構成し、さらに小説的な側面も付加したもので、人物相関図もかなりわかりやすくまとまっていた。ただしその創作部分と史実部分とがどうしても接合しない点はやむを得ないと思った。
大名家という組織の中での権力抗争もしくは派閥争いと言ってしまえばそれまでだが、不思議と現代社会における企業や組織の中での同様な問題に左右される人間たちと似通った姿に見えてくる。地位や権力の虚しさをここでも感じることがあった。☆☆☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。
https://dl.ndl.go.jp/pid/1644274
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%8A%E9%81%94%E9%A8%92%E5%8B%95