1955年(昭30)東京文芸社刊、タイトルは『復讐鬼』
1960年(昭35)浪速書房刊、『神秘の扉』
神奈川県の海沿いの田舎町に建つ広荘な洋風建築の松楓閣に暮らす富豪の朝比奈家に次々に起きる失踪事件。古文書の整理に雇われた秘書、群司の眼を通して丁寧に語られるその不気味さに満ちた屋敷の空気は迫真的に感じられる。
目次の見出しを紹介したから即ネタバレだと非難するのは過敏過ぎる気がするが、この作品は明らかに黒岩涙香の2つの傑作「幽霊塔」と「白髪鬼」の骨格を借用したことがわかる。いずれも江戸川乱歩によってリライトもしくは改作されたもので、この高木作品は言い方が悪ければ「三番煎じ」になる。あるいはオマージュと言えるかも。残念なのは、語り手の視点が後半で転々とすることと、これだけの犯行を所轄の警察が少しも解決できないマヌケぶりが気になったことだ。涙香作品を知らない人にとってはそれなりに楽しめると思う。☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。
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