1955年(昭30)1月~7月、中部日本新聞、西日本新聞に連載。
1955年(昭30)大日本雄弁会講談社刊。(ロマンブックス)
タイトルの由来は、シェークスピアの「ハムレット」中のセリフ「弱き者よ、汝の名は女なり」だと思われる。事業の失敗から夫が自殺したヒロインの千春は、未亡人になった途端に男たちから言い寄られる。まだ若く美貌であるためだが、生活は破綻しており、実家に戻る以外には考えられなかった。美人女性は往々にして、外から声をかけられ、誘われるのに乗るか反るかを考え勝ちで、自らの意思で目標を探すことがないのかも知れない。
好意を持たれても、自分では好きになれない男に対して、決定的な態度を示そうとせず、むしろ誤解を助長させるような言動で、話をもつれさせてしまう点では失望を感じながら読むことになった。なぜ中止せずに読み続けたのか? それは彼女が美人だからであり、こうしたダメ美人の結末がどうなるかを見定めたいという気持からだった。女に限らず、男を含め人間は皆弱い者だということなのか。☆☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1790624
表紙絵は佐野繁次郎。
《ここまで来てしまっては、もうその気力も失せどうにでもなるようになれという気持だった。考えてみれば、悲劇のもとは千春自身にあった。意志が弱く環境にひきずられる自分の無性格、今までは善意だと思っていたそれが、次々と悲劇を作り出し、遂にはこんな地獄の底にまでわれひとともに投げこんでしまったのだ。》(地獄の道)