明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『青鷺の霊』 土師清二

青鷺の霊:土師清二

1928年(昭3)朝日新聞社刊。

1955年(昭30)和同出版社刊。

 

青鷺の霊:土師清二2

タイトルは中身とほとんど無関係だった。江戸中期の仇討ちをめぐる群像劇。一方で親の仇を探して東海道を旅する浪士の阿部豊之助主従がいる。そして彼らに人違いで父親を討たれた浜松藩士の篠田秋弥も親の仇として彼を追うことになる。さらに街道筋の胡麻の蠅やら猿回しの一味やらが加わり、仇を討つことや恨みを果たすことがその人物たちの行動の原動力となる。結局はそれぞれが東海道を東に西にうろうろと行き来し、あるいはひたすら江戸を目指すことになる。各々の心境の微妙な変転を描いてはいるが、この人たちは何を糧に生きているのか?を思わず考えてしまった。しかしそれぞれの人物の書き分けは巧みで、長く読めば親しみも出てくるのは作者の手腕だと思う。☆☆



国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。

https://dl.ndl.go.jp/pid/1354546

挿絵は小田富弥。

 

青鷺の霊:土師清二3

《お浦も同じやうに虫籠の方へ目を向けてゐるのだったが、お浦にしても、このまゝではゐられない気持が、ムクムク胸を突きあげてくるのだった。別れねば、ドウなるかも知れない。何所やらに見どころがあるやうで、結局はナニもない男のやうに、お浦には豊之助が見え出したのであった。》(食ひつめた二人)



*参考サイト:宇津ノ谷峠 (うつのやとうげ)@SUNSHU Travel(駿州)

tokaido-sunshu.jp



 

 

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