明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『二番線発車』 高見順

二番線発車:高見順

1955年(昭30)1月~12月、雑誌「婦人生活」連載。

1956年(昭31)東方社刊。

 

お嬢様育ちのヒロイン恵子が、初めて社会に出て働こうとして父親の紹介した会社に就職する。職場の先輩として積極的に声をかけてくれた男に好感を持つが既婚者であり、別の演劇好きの青年からは言い寄られる。好奇心に釣られて行動するがガードの甘さにつけこまれる。男女の関わりの中で、好感から好意へ、慕情から恋愛へと揺れ動く若い女性の心理を描いているが、その頼りなさが作者の姿勢の軽薄さにも思えて締まりがなかった。読者が若年者であれば共感が得られたかもしれない。☆☆

 

二番線発車:高見順2

国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。

https://dl.ndl.go.jp/pid/2324913/1/68

https://dl.ndl.go.jp/pid/1645070

雑誌連載時の挿絵は佐藤泰治。

 

二番線発車:高見順3

「好きにならなくちゃ悪い――そういうんじゃなくて、自然と、ほんとに好きになって行く気がするんですの。好きでもないのに、好きなように思われては、悪いなアと、そこは、悪いという気持はあるけど、その悪いなアという気持から、好きになろうというんじゃないんです。コロの方は、わたくしのこと、ほんとに好きなのよ。その気持が、自然とわたくしの方にも移ってきて、コロを好きになってゆく。――もう、好きになっている、そんな気がするんですの。」(大空へ)