1950年(昭25)矢貴書店刊。新大衆小説全集第6巻所収。
戦後混乱期の東京と伊豆を舞台にしたサスペンス小説。満州から戻った身寄りのないヒロイン江原ユリの身辺に次々に迫る脅迫じみた婚姻届の強要と殺人事件。自分をつけ狙う者たちが自分のことを自分以上に知っているらしい謎の事実の存在。その謎を解明できないままに翻弄される不安と恐怖を、戦後の焼け跡の残る東京の風俗の中に描いている。後半の伊豆の旧華族別邸は領地内ではないのに、住民の支配者として強大な権力と影響力を及ぼしていた点は現実離れしているように思えた。☆☆
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https://dl.ndl.go.jp/pid/1708094
挿絵は富賀正俊。(雑誌連載時のものを掲載)