明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『黄昏の悪魔』 角田喜久雄

1950年(昭25)矢貴書店刊。新大衆小説全集第6巻所収。

1957年(昭32)桃源社推理小説名作文庫。

 

 戦後混乱期の東京と伊豆を舞台にしたサスペンス小説。満州から戻った身寄りのないヒロイン江原ユリの身辺に次々に迫る脅迫じみた婚姻届の強要と殺人事件。自分をつけ狙う者たちが自分のことを自分以上に知っているらしい謎の事実の存在。その謎を解明できないままに翻弄される不安と恐怖を、戦後の焼け跡の残る東京の風俗の中に描いている。後半の伊豆の旧華族別邸は領地内ではないのに、住民の支配者として強大な権力と影響力を及ぼしていた点は現実離れしているように思えた。☆☆

 

 

国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。

https://dl.ndl.go.jp/pid/1666144

https://dl.ndl.go.jp/pid/1708094

挿絵は富賀正俊。(雑誌連載時のものを掲載)

 

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