1961年(昭36)1月~11月、雑誌「新週刊」連載。
1961年(昭36)12月、角川書店刊。
1963年(昭38)角川小説新書。
(こくへき)山伏信仰で知られる熊野川流域での殺人事件。電力開発工事の監督官庁の敏腕課長が現地への出張中に失踪し、他殺体で発見される。交通の不便な山奥の集落や山々の風景を土地勘のある視点で丁寧に描いているのが巧みだった。一見何でもない公務員がなぜ惨殺されなければならなかったのか、その犯人の心の奥までは見通せず、また語られもしないのが不透明感として残った。☆☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。
https://dl.ndl.go.jp/pid/3555699/1/18
https://dl.ndl.go.jp/pid/1648891
カバー絵は鳥海青児、雑誌連載時の挿絵は御正伸(みしょう・しん)。
※初出掲載誌「新週刊」は戦後1961年5月から総評系の肝入りで、働く者のための生活総合誌としてスタートした。執筆者は多彩、記事も政治的な言説は控え目で、良識的な週刊誌と思われたが、販売数が伸びず、わずか13カ月で廃刊となった。