明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『母孔雀』 竹田敏彦

1956年(昭31)1月~12月 雑誌「小説倶楽部」連載。

1956年(昭31)東方社刊。

 

ヒロインは若後家の身ながらも兜町で「紅将軍」の異名を持つヤリ手の証券会社経営者となっている。女手ながら美貌を武器に、強引な手腕で亡夫の後に会社を立て直した。物語の前半はその栄華の中に居ながらも、家庭では義理の子供たちに疎まれ、孤立した心の虚しさを感じている。そのところに、昔離縁させられた実の子供たちが貧困の中で働いているのを発見する。彼女はその境遇の改善のために手を差し伸べることに喜びを見出していく。根底には古来の母子物の哀話感が見えはするが、成功した女傑の精神的充足に絡ませたところに戦後世相の面白味があった。☆☆

 

 

国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用

https://dl.ndl.go.jp/pid/1790613/1/34

https://dl.ndl.go.jp/pid/1645358

挿絵は成瀬一富。

 

 

 

 

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