1970年(昭45)4月~1973年(昭48)12月、雑誌「新聞研究」連載、全45回。
1974年(昭49)国書刊行会刊。
国会図書館デジタル・コレクションでは、雑誌「新聞研究」に連載されていたので、毎日1号ずつ読むのが楽しみとなった。生きた明治文学史を読んだという感じがする。
明治大正期にはラジオ・テレビなどのメディア媒体は無く、もっぱら紙情報=新聞が重要な役割を果たしていた。娯楽も同様で、新聞は安価で手軽な印刷媒体であり、毎朝配達されるもので連載小説を読み続けることができた。これは同時期の欧米においても同様で、定期購読者の獲得に功を奏した。また小説本の版元は、連載で人気が出たものを改めて書籍として出版することで売れる見通しを予め立てることができた。
文学史上の主要な作品のほとんどが新聞小説として連載されていたこと。新聞小説の変遷こそが文学史の大きな側面として、この著作から学ぶことができたのは収穫だった。二葉亭四迷、田山花袋、徳田秋声、夏目漱石などの文豪をはじめ、多くの作家が新聞社に雇用された記者であり社員であった。作家と作家の交流、あるいは作家と新聞社の社員との交友は生き生きと描かれている。
年表資料として、その時期に同時に連載されていた作品を並列表記することで、名作のみならず、同時代の文筆活動の多様さをうかがい知ることができた。貴重な著作である。☆☆☆☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。
https://dl.ndl.go.jp/pid/3360784/1/30
《わたしが「新聞小説史」で追求しているひとつのテーマは、人間と人間の結びつき……この場合は新聞社の幹部、編集者と作家との信頼と交情が、どのように新聞小説に影響し、ひいてはそれが新聞の声価をどんな風に左右するか、ということだ》(主筆三山の腹芸)