1955年(昭25)6月~1956年(昭26)5月、雑誌「読切倶楽部」に連載。過去に別の雑誌に掲載されたものの再掲載を含め計12篇。
村上元三が生み出した捕物帳の主人公 加田三七のシリーズは作者自身も愛着があったようで、終戦直後に書き出してから20年のうちに80作を越えていたという。ほとんどが雑誌掲載が初出だったが、この「新編」として連載した作品は作者の存命中は単行本化されなかった。今年(2023)にようやく捕物出版という会社で全篇出版された。
元八丁堀同心だった加田三七がそば屋を始めたのは明治に入ってからで、警察の部外者ながら事件が起きると首を突っ込むのが性分。こうした人物像が出来上がると各篇の物語の中で自由に動き回る感じが出てくる。事件の関係者のドラマの外側で、ちょい役で出て解決のヒントを与えるだけに過ぎない場合もある。あるいは現役だった同心時代に遡って、隠居している元同心の父親まで登場させたりして、三七ワールドの広がりも見せてくれる。なかなか読んで楽しいシリーズだと思う。☆☆☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。
https://dl.ndl.go.jp/pid/1723024/1/34
挿絵は山本武夫。
*参考サイト:加田三七捕物帳について
https://www7b.biglobe.ne.jp/~tdk_tdk/kada37.html
*捕物出版とは。
http://www.torimono.jp/about_us/