明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『踊子殺人事件』 武田武彦

踊子殺人事件:武田武彦

1946年(昭21)岩谷書店、岩谷文庫10。

 

武田武彦という探偵小説作家の名前はあまり聞かなかったが、調べてみると終戦直後に創刊された雑誌「宝石」の編集にたずさわった人で、その合間に作品を書いていたようだ。デジタル版で岩谷文庫の一冊を手にしたが、あとから考えれば、その時期に刊行された粗悪な紙の薄っぺらな冊子の短篇だった。編集者らしいこなれた筆致で、戦後風景の中で起きる事件を書いているが、モーリス・ルヴェルの短篇のネタを(どれとは言わないが)応用したように思う。恐らく「宝石」に掲載したものを文庫化したようだ。その時期の推理小説業界の状況も垣間見えて面白かった。☆☆

 

国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。

https://dl.ndl.go.jp/pid/1111190

口絵は山名文夫

 

踊子殺人事件:武田武彦

《他の文学雑誌と違って、わが探偵雑誌は毎号の原稿に頭をなやましてゐる。小酒井不木夢野久作浜尾四郎甲賀三郎小栗虫太郎蘭郁二郎氏などを次々にあの世へ送ってしまひ、これに代る新人の登場もなく、まったく困ってゐるのだ。》(殺人を売る女)



にほんブログ村 本ブログ 古本・古書へ