1905年(明38)青木嵩山堂刊。
江見水蔭の文学結社江水社に加わっていた万代山影(本名・英五郎)との共作となっている。栃木市の女学校で学ぶ仲良しの二人の令嬢が遠足で大平山に登った時、大鷲に襲われて一方の澄子は顔に傷を負い、入院する。しかし彼女はその夜忍び込んだ賊に凌辱されたのを苦にして自殺する。残された敏子はその仇を取るために犯人探しの旅に出る。明治中期にはまだ鉄道網が整備中で、関東では川蒸気という水運が利用されていた。ここでも鬼怒川や利根川の貨客の往来が描かれている。自由民権運動も盛んで、彼女は女権活動家の講演活動に加わるが、その様子にも時代の特徴が見えて興味深い。最後に彼女は親友の復讐を果たすのだが、ハッピーエンドとはならない結末は予想外だった。実話に基づいたようにも思われた。☆☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。
https://dl.ndl.go.jp/pid/885354
口絵は作者未詳。
*参考ブログ
醒餘贅語:江見水蔭と江水社・山口寒水(七)礒萍水、万代花舟