明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『夜の蜘蛛』 江見水蔭

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1926年(大15)樋口隆文館刊。三分冊のものを10日ほどで読んだ。江見水蔭は明治大正期の流行作家で、文学史上は無名だが当時は人気があったようで数多くの作品が出版されていた。速い場面展開と軽いタッチで、文体も現在の書き言葉とほぼ同じになっていて読みやすい。大震災直前の東京の風俗、銀座のカフェーや浅草の賑わい、池上本門寺の曙亭、井の頭の怪洋館などが描かれる。深夜、車で轢き逃げされて死んだ父親の無念を晴らすために犯人を探す美人姉妹の物語。スリルとサスペンス満載で往年の娯楽映画を見る感覚に通じる。☆☆☆

国会図書館デジタル・コレクション所載。口絵は川瀬巴水による珍しい人物画。

 

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