明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『空屋の美人』 松林伯知

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1894年(明27)三友舎刊。講談速記本。演者の松林伯知(しょうりん・はくち)は松林派の高弟で、伯円に続き非常に多くの講談本を出した。明治中期頃の最初の探偵小説ブームでは近代的な題材の探偵講談も行われ、講談師自身が創作したものもある。これはその一つで、序章的な前置きが話に奥行きを持たせている。事件捜査の主体が途中から劇的に入れ替わるなど、物語の構成に工夫が施され、好感が持てた。☆☆☆

 

国会図書館デジタル・コレクション所載。口絵は高橋松亭。

dl.ndl.go.jp

※序より《講談家の愛嬌者松林伯知子舌滑かに此の好話を演じ出し、今村次郎子筆面白く此の好話を写し出す。真に是れ茶味口に甘く、窓紙月影を宿す時に於て、此の閑を消すに此の書を以てせば、世態人情雑然として、目睫(もくしょう)の間に映じ来らん。亦(また)一種の哲理を感悟するに餘りあるべし。》(三宅青軒)

 

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