1932年(昭7)新潮社、新作探偵小説全集 第3巻。
1956年(昭31)河出書房、探偵小説名作全集 第2巻。
「怪盗」というよりも「怪人」だろう。盗み程度では済まない、平気で次々に殺人を企てる鬼畜の犯人だ。敏腕記者がやっと取れた休暇を過ごすために訪れた西伊豆の辺鄙な漁村が寄りによって怪事件の舞台となる。その偶然の重なりを気にする前に、どんどん謎の渦の中に引き込まれていく。憂いを秘めた美貌の女性は自らの出自や来歴を頑なに語ろうとしない。犯人は単なる変装の名人というだけでなく、それを上回るトリックを仕掛ける。主人公獅子内の身体を張った活躍が読んで快適だった。☆☆☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。
https://dl.ndl.go.jp/pid/1688830
https://dl.ndl.go.jp/pid/1356940/1/73
挿画は岩田専太郎。
「男がね、女の前で、忙しいと云う言葉を使うようになったら、その男はもうその女に興味を持っていないのですって。ですから、女の前で『忙しい』と云うのは失礼よ」(偽証)