明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『人間豹』 江戸川乱歩

人間豹:江戸川乱歩

1939年(昭14)新潮社刊、江戸川乱歩選集 第5巻。

 

 乱歩特有の怪人対探偵・明智小五郎の探偵活劇の一つ。少し前に読んだ「蜘蛛男」と骨組みが似通っている。前半は主人公の青年が気に入っていた女性たちを立て続けに人間豹に奪われるストーリーだが、後半は明智探偵に主役の座を譲って、完全に脇役になる。レビューの女優として以前連作小説に登場していた「江川蘭子」の名前がここにも使われている。彼女に関する性格描写の点では前作のほうが印象深かった。どちらにしても怪人とその一味の手際の良さに対し、警察側の間抜けさが目立ち、それを明智小五郎がカバーする図式になる。この本の刊行が戦中期にかかって検閲が厳しくなったためなのか、伏字表記の個所が多く見られた。乱歩のエロ・グロの趣向には犯人たちの心の奥が見えない不気味さがある。☆

 

国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。

https://dl.ndl.go.jp/pid/1901100

 


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