明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『大衆文学夜話』 岡田貞三郎(述)

大衆文学夜話:岡田貞三郎

1971年(昭46)青蛙房刊。

 口述をもとにした「聞き書き」本。岡田貞三郎は講談社の草分けから雑誌「講談倶楽部」の編集者として大正から昭和前期に活動した。生来視力に障害があったが不自由を乗り越えて主任(編集長)まで務めた。やがて全盲となったため自ら書き記すことができないので「聞き書き」となったようだが、健常者ならば簡単に過去の書籍や文書類を参照できたり、ノートを見ることができるのだが、頭の中に見事に整理整頓されていることに驚いた。

 

 講談社の社名が文字通り「講談」に由来したこと、そして講談雑誌のステータスが当時の文学雑誌からは大きく軽視されていたことなど、のちの大衆文学の隆盛から振り返ればその成長エネルギーの大きさに圧倒された。出版社の社内事情やら、作家たちとの稿料をめぐるやり取り、作品の依頼のための通いつめなど、口述本ゆえの読みやすさには独特の味わいがあった。☆☆

 

国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。

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