1893年(明26)春陽堂刊。探偵小説第11集。明治の文豪が書いた探偵小説ということで目を通すことにした。言い尽くされた感想になるだろうが、読書記録なので・・・
この発表当時、鏡花は19歳だった。2年前に尾崎紅葉に弟子入りして後、この年から処女作を新聞に連載していた。『活人形』(いきにんぎょう)は第2作になる。版元春陽堂の方針で匿名ということで、白水郎という名前で出した。鎌倉は鏡花自身が暮らしていた時期もあったためか、初期の作品に舞台として取上げていることが多い。鎌倉雪の下にある化物屋敷と呼ばれる家で虐げられている二人の娘を救うために単独で奔走する探偵。外国小説の翻案なのかどうかは不明。様々な出来事のすべてが一晩のうちに起きて結末を迎えるという芝居がかった筋立ての不自然さが気になる。一巻の物語に書き上げる力量はさすがとは思うが、大旅館か寺院でもない限り、人物の行動を別々の場面に描くほどの広い屋敷はないのにという稚拙さも感じる。人が隠れることが出来るほどの人形のからくりには幻想味を感じた。☆☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。口絵は鰭崎英朋だが、デッサン風に見える。