明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『清水定吉:探偵実話』 無名氏(高谷為之)

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1893年(明26)金松堂刊。清水定吉は幕末から明治前期にかけて実在した凶悪なピストル強盗殺人犯だった。五十歳で逮捕されるまで捜査の網を巧みに潜り抜け、大胆な犯行を繰り返した。警察内部に取り入って情報を得るほか、遊興にふけることをせず、単独犯行を貫いた。また明治の警察組織でお粗末にも捜査情報の共有が行われなかったのが悔やまれる。作者の前職は警察官だったので、事件の細部にわたる丁寧な考証がなされている。長篇の探偵実話として、自身を含め大部分を匿名にして書き連ね、都新聞に69回連載し好評だった。当時第一級のノンフィクション作品だったと言えるだろう。☆☆☆☆

 

国会図書館デジタル・コレクション所載。木版挿絵は山田年貞。

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