2021年(令3)柏書房、横溝正史少年小説コレクション3「夜光怪人」所収。
1949年(昭24)5月~1950年(昭25)5月、雑誌「少年少女譚海」(たんかい)に連載。
横溝正史による少年向け探偵小説。仮面、怪盗、変装などのキーワードからも江戸川乱歩の少年物作品との類似性を直感する。全身黒ずくめ、つば広の帽子、大きなマント、能面のような仮面の怪人が高価な宝飾品を奪うと予告し、警察や探偵の目をかすめて実行する。横溝が生んだ名探偵は金田一耕助の他に、由利先生と三津木記者のコンビのシリーズがあり、この作品はその後者が活躍する。当然ながら少年少女向けなので、探偵少年御子柴進や謎の少女藤子の行動も目立つ。最後は瀬戸内海の小島に隠された財宝まで追求するので、謎解きよりは探偵活劇として楽しめた。怪人がなぜピカピカの夜光飾だったのかは不明。単なる自己顕示欲としても手間がかかり過ぎた。☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。
https://dl.ndl.go.jp/pid/1766684/1/90
挿絵は嶺田弘。
*雑誌はデジタル化できていない欠号も多いので、全篇通読するには今のところ上掲の柏書房版などに頼るしかない。
《それにもかかわらず、夜光怪人にかぎっては、暗闇のなかでもキラキラ光る衣装を、わざと身につけているというのです。どんな暗闇に身をひそめてもハッキリ目印になるような、夜光帽子をかぶり、夜光マントを着、おまけに夜光靴まではいているというのです。》(隅田川の怪)