1950年(昭25)5月~ 雑誌「少年少女譚海」連載。
1951年(昭26)偕成社刊。
高木彬光の生み出した名探偵神津恭介(かみつ・きょうすけ)の活躍する少年少女向けの探偵活劇。ある夜に大学病院の外科部長が謎の女によって拉致され、死んだばかりの人間の脳髄を蝋人形に移植するという手術を強要される。この最初の設定からもSFじみた悪魔的発想を感じさせる。これを発展させると死神博士の命令に絶対服従するロボット軍団のような蝋人形たちがうごめくはずなのだが、物語の途中からは薬品による生身の人間の精神コントロールへと手法が変化していく。少年少女たちの活躍も盛り込まれ、怪人の身代わりや変身術の手口は乱歩的な鄙型を踏襲している。あまりにも誰もが簡単に変身してしまえるとなると、だまされる側の人間たちが馬鹿に見えてくる。やはり最初の設定が突飛過ぎたのかも。☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。
https://dl.ndl.go.jp/pid/1766688/1/148
https://dl.ndl.go.jp/pid/1625165
挿絵は伊勢田邦彦。
*参考記事:『悪魔の口笛』 高木彬光