1913年(大2)磯部甲陽堂刊。表題作「密封の鉄函」など4作の短編集。読みだしてからわかったのだが、二つ目の「海賊船の少年」を含め、少年向けの探偵・冒険譚であり、後年の江戸川乱歩の少年向けシリーズと共通する空気感があって懐かしい感じがする。「怪光の裁判」は照魔鏡というウソ発見器に類する実験で犯人を特定するが、朝鮮併合という歴史的な暗部が根底にあって今では読むに耐えない。最後の「禿頭組合」はドイルの有名な「赤毛組合」の翻案だった。三津木はこの時代の少年向け訳業で活躍したが、この2年後34歳で病没した。☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。口絵は中村和。
※版元磯部甲陽堂の広告