明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

秘密小説

『?(ぎもん)の女:秘密小説』 玉川真砂子

1919年(大8年)共成会出版部刊。大正期の女性ミステリー作家と思われるが、この作品1冊のみで、生没年も不明。タイトルに疑問符?を使っている点も気になって読んでみた。ある殺人事件をきっかけに重要人物が身を隠すという設定はミステリー小説の手法のパ…

『魔の池』 中村兵衛

1907年(明40)大学館刊。大学館という版元は冒険活劇から奇怪なミステリー風の読物に至るまで多数出版していた。これは東京の芝公園弁天池を巡る奇譚。日露戦争が勃発し、軍人たちには出征が目前に迫っていた。若い陸軍大尉は伯爵令嬢と結婚式を挙げる予定…

『死骸館』 小原夢外(柳巷)

1908年(明41)大学館刊。小原夢外という作家名についてはほとんど情報が見つからなかったが、下掲のブログ記事により小原柳巷 (1887-1940) と同一人物であったことがわかった。明治末期の20代に夢外、大正時代の30代に柳巷、そして昭和初期には流泉小史…

『断頭台 : 怪奇小説』 星塔小史

1909年(明42)大学館刊。 作者の星塔小史(せいとう・しょうし)は生没年ほかも全く不明。明治後期に大学館から出された「奇絶快絶文庫」というシリーズ全8巻の著者で、この小説を含めその他数点を残しているのみなので、この版元のために一時的に筆名とし…

『髑髏団』(幽霊屋敷) 小原柳巷

1916年(大5)三芳屋刊。小原栁巷(りゅうこう)は経済雑誌の記者だったが、欧米の冒険小説に着想を得て、自分なりの小説を都新聞に連載したところ、大いに人気を獲得したという。向島の小松島にある旧大名屋敷は大実業家に買取られた後に荒廃し、幽霊屋敷と…