1948年(昭23)八重垣書房刊。作者の水谷準の名前は戦後のフランス推理小説の文庫本で翻訳者として知られていた。作家でもあったが、長年「新青年」の編集長として活躍していたので、作家としての作品数は多くない。現在、国会図書館デジタル・コレクションに収容されているのは少年向けの冒険小説「獅子の牙」のみである。終戦直後の刊行で、横書きのタイトルも今風に左から右へと直っている。主人公兄弟の叔父がアフリカで殺害され、そこに遺したダイヤモンドの秘宝を探し出すべく暗号文が届けられる。そこで彼らは探検隊を仕立ててアフリカに赴く。同時代に爆発的に人気を博した絵物語作家山川惣治の作品を彷彿とさせる。挿絵の小松崎茂の絵も当時の少年たちの憧れだった。懐かしさで一読した。☆☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。表紙絵・挿絵作者は小松崎茂。