明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『月に叢雲』 河原紅雨

 

(つきにむらくも)1916年(大5)樋口隆文館刊。前後2巻。台湾から帰任したばかりの軍人の父親が謎の失踪を遂げる。さらに養育してくれた叔父夫婦が中国に移住したため、ヒロインの清江は身寄りもなく、鵠沼の寺に預けられる。と、ここまではよくある悲劇小説の設定なのだが、後半は一転してホームズ物「四つの署名」の翻案となって、二つの要素を混ぜ上げた作品になっている。ホームズ役の探偵は、堀村清六(ほりむら・せいろく)で何となくシャーロックに似ている。原作のインドの財宝は、台湾の富豪の宝玉に置き換えられたが、当時の台湾の現地事情を迫真な筆致で描いている。こうしたミックス作品に思いがけず出くわすと楽しい。☆☆☆



国会図書館デジタル・コレクション所載。口絵は須藤宗方。(Japan Search 朝日コレクション)

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