1885年(明18)速記法研究会刊、8分冊。
1991年(明24)上田屋刊。「黄金の罪」(こがねのつみ)
明治中期になって、坪内逍遥の「当世書生気質」や円朝の速記本などによって言文一致体への動きとともに文学の充実が見えてくる。円朝に関しては、旧来の演目への妨害工作なども背景にあったらしいが、円朝自身、明治人としての進取の精神で、西洋物の翻案や着想を創作に近い形に展開させ得る話芸の力量を備えていたのだと思う。これも序言にある通り英国小説の翻案であり、場所を東京に移し、人物名もスミスを清水に、ハミルトンを春見に、エドワードを江戸屋に読み替えている。一時「黄金の罪」という題名に変えて上田屋から出版されたが、円朝全集では当初の「ジョージスミス」の題名で収容されている。円朝の語り口は速記されたものでは文体として読めるのだが、円朝らしさとして味わえる。☆☆☆☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。挿絵は歌川国峯、歌川国久など。