明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『女優 菊園露子』 三宅青軒(緑旋風)

f:id:maigretparis:20220128110511j:plain

 

1911年(明44)三芳屋書店刊。前後2巻のやや長編。筋の進行、展開ともに新聞の連載小説風に出来ている。ヒロイン菊園露子は劇団女優の花形だが、その出生に秘密がある。伯爵家の庇護の下に演舞をはじめ諸芸全般を極め、護身術も備えた絶世の美女という設定。殺人、失踪、誘拐、暴力沙汰など身辺に次々に起きる危機を乗り越えて生きていく。特に衣装や髪型、ブランド品に関する描写(例えば「駿河屋の羊羹」「塩瀬の帯」など)が詳しく、女性読者の受けを狙ったと思われる。また明治後期における国民の思潮、天長節や朝鮮併合の祝賀行事、耶蘇教会のクリスマス、大和魂の形成など歴史的に興味深い記述も多い。☆☆☆

 

国会図書館デジタル・コレクション所載。口絵は公文菊仙と推定されている。

dl.ndl.go.jp

※「事は早や六日の菖蒲(むいかのあやめ)なれば」=(端午の節句に)間に合わないことを意味する

 

 

にほんブログ村 本ブログ 古本・古書へ