明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

『毒百合』 橋本埋木庵

毒百合:橋本埋木庵

1915年(大4)樋口隆文館刊、前後終全3篇。

二つの筋が織り交ぜになった構成になっている。一つは美人の毒婦の半生記、もう一つは富豪商家の身上の乗っ取りを図る男の悪知恵の成功談である。幼い孤児は出会った大人の後を付き従うこと以外に生きる道はない。性悪な女に拾われたことがその子の性格や道徳観に影響を及ぼす。さらに女性にとって、美貌はオールマイティな力を発揮する。それが窃盗であろうと詐欺であろうと恐喝であろうと、そして殺人さえも、罪状を寛容する心理に陥る男の弱みがある。小説では悪の繫栄で終わることに満足しない。悪を失墜させる何らかの懲罰が必要になる。彼らを追い込む警察の活躍はあるが、取ってつけたような証拠発見は締まりが悪かった。☆☆

 

国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。

https://dl.ndl.go.jp/pid/909415

https://dl.ndl.go.jp/pid/909416

https://dl.ndl.go.jp/pid/909417

口絵は八幡白帆。

 

毒百合:橋本埋木庵毒百合2

『ウム寒い筈だ、北だ、筑波颪の木枯しと云ふのは此の風の事だ、旋(やが)ては雪を運んで呉る厭なもので、老人(としより)には餘り有難くない風だよ』(筑波颪)

 

『真個(ほんと)に人間てえものは、恁(か)うして活(いき)て居ると色んな苦労があるものだね。一層気の揉る事ばかり出来て、而(そ)して見ると矢張貞さんの如(よう)に、此の世の終りを告げてお目出度くなって仕舞た方が、苦労する事もなけりゃア心配になる筈もないから、夫(そ)れに此の身は、親兄弟もなく苦労があったとて、誰に相談するでもないから、寧(いっ)そ貞さんの如に、死んで仕舞った方が増しかも知れないね』(文身の変色)

 

『紫被布のお連:探偵実話』 橋本埋木庵 (2023.10.16)

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『憐なる母と娘』 橋本埋木庵 (2022.04.05)

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『大悪僧』 橋本埋木庵 (2022.01.26)

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