1958年(昭33)2月~7月、雑誌「小説倶楽部」連載。
1958年、東京文芸社刊。
有名な「鞍馬天狗」の模作であることは作者も重々承知の上だろう。雑誌連載時はタイトルの末尾が「斬魔剣」だった。勤王派と佐幕派が対立する幕末の京都を舞台とした全六話。いずれの派にも属さない宮中派とでも言うのだろうか、別名「祇園天狗」と呼ばれる志士、剣の達人志摩左近之介の活躍を描く。京都の四季折々の風情ある情景描写や百人一首の藤原定家の逸話、俳句や漢詩へのたしなみなど、衒学的要素を織り込む一方で、たくましい青年剣士の男性としての生理的欲求をまともに表現する特徴がある。くだけて言えば、女と交わることで剣の技が冴えるのだが、やたらに襲撃してくる新撰組を相手にする図式も段々陳腐に見えてくる。☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。
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雑誌連載時の挿絵は成瀬一富。