明治大正埋蔵本読渉記

明治大正期の埋もれた様々な作品を主に国会図書館デジタル・コレクションで読み漁っています。

文芸小品集

『頭の悪い男』 山下利三郎

日本探偵小説全集:改造社版、第15篇(山下・川田集) 1930年(昭5)改造社、日本探偵小説全集 第15篇(山下利三郎・川田功集)14篇所収 1928年(昭3)平凡社、現代大衆文学全集 第35巻 新進作家集 4篇所収 山下利三郎(1892~1952)は大正後期の雑誌「新青…

『白猫別荘』 北村小松

白猫別荘:北村小松 1948年(昭23)新太陽社九州支社刊。 怪奇小説集と銘打った短編集全9篇を収める。終戦直後の刊行で版組や用紙が粗悪のため、印字も不鮮明で読みにくい。怪奇趣味というよりも、人間心理の奥底にある不可解なものを完全には否定も肯定も…

『相川マユミといふ女』 楢崎勤

1930年(昭5)新潮社刊。新興芸術派叢書第22編。楢崎勤は作家である傍ら雑誌「新潮」の編集者でもあった。この本は表題作の他23篇を収める。都会に生きる孤独な女性の生きざまの寸景の集合体と言える。昭和初期のダンス・ホールで来客の相手をする踊り子とし…

『重右衛門の最後』 田山花袋

1908年(明41)如山堂刊。『村の人』という表題の短編集に所収。他に『悲劇?』と『村の話』との3篇から成るが、文学史上も知名度が高い「重右衛門」を初めて読もうと思った。予想通り難解だった。従ってこの1作だけで読了とした。 名前からして鷗外のよう…

『両国の秋:綺堂読物集』 岡本綺堂

1939年(昭14)春陽堂刊。タイトルの「両国の秋」は綺堂の作品中で情話集に分類される江戸期の男女の情愛のもつれを描いた中篇になる。春陽堂のこの一巻には、他に半七物の最後の四篇と共に半七の外典とされる『白蝶怪』の中篇が併収されていた。 『両国の秋…

『近代異妖篇』 岡本綺堂

1926年(大15)春陽堂刊、綺堂読物集3、全14篇。「青蛙堂鬼談」の続編と明記している。もしその怪奇談の会がそのまま続いたと考えれば徹夜で語りあったということになるだろう。この作品集は中の一作品「影を踏まれた女」のタイトルをつけて出版されたこと…

『青蛙堂鬼談』 岡本綺堂

1926年(大15)春陽堂刊、綺堂読物集2、全12篇。 1939年(昭14)春陽堂刊、夕涼み江戸噺。 三月三日の雪降る夕べに青蛙堂(せいあどう)の主人から呼び出しを受けたので行ってみると十数人の客が集まった。食事の後に主人から今日の会合の主旨は怪奇な話を…

『三浦老人昔話』 岡本綺堂

1925年(大14)春陽堂刊、綺堂読物集1、全12篇。 1939年(昭14)春陽堂刊、夕涼み江戸噺。 岡本綺堂には本業の戯曲作品と一連の半七捕物帳の外に奇談の聞き書きのような作品集がある。若い頃に半七を何冊か読みふけったあとは、転勤のためその奇談集のほう…

『新編ふらんす物語』 永井荷風

1915年(大正4)博文館刊。長年積ん読状態だった本=積読書庫に入れたままでこの世を去る見込みだったもの、を一つ読了できた。純文学作品は物語とは一線を画して、自己の心的感興の移り変わりを書き綴っていくものだということを体得した。 エリート官僚を…