
1956年(昭31)9月~1957年(昭32)8月、雑誌「読切俱楽部」連載。
1957年(昭32)東方社刊。
大阪の繁華街を舞台としたロマンス篇。ヒロインの朱美子は平凡なサラリーガール。甲斐性のない兄が使い込んだ資金の穴埋めのため、その旧友は大金を融通する代わりに、彼女に道ならぬ恋を打ち明けて迫る。彼女はそれを拒否し、金を突き返すことにするが、札束を入れたハンドバッグを置き忘れて絶望する。この「バッグを置き忘れる」という設定が一般女性の性質上あまり起こり得ないことで、作為的に感じた。

バッグは幸いにも真面目な青年順一に拾われるが、それを届けに行ったアパートに住む元同僚だった女に詐取されてしまう。思い余った朱美子は資金を前借という条件で、キャバレー(アルサロ)でホステスとして働くことになる。
物語が大阪で進行するのにもかかわらず関西人らしい気質や言動がほとんど現われ出ず、一瞬東京のような都会と錯覚する感じからすると、もっとローカル色が出ても良かった。戦後昭和の健全なラブストーリーと言ったところ。☆☆
国会図書館デジタル・コレクション所載。個人送信サービス利用。
https://dl.ndl.go.jp/pid/1723046/1/34
https://dl.ndl.go.jp/pid/1356973
雑誌連載時の挿絵は下高原健二。

《今更のように、彼女は、わが身の移り変りのあまりのはげしさに、ただ溜め息をつくばかりだ。と言っても、今日と言う一日を、朱美子は決してくよくよと送ったわけではなかった。彼女は、自分の手で選んだ運命のこの新しい道を、けなげに、精一杯に、生きようと努力したつもりだった。》(夢の内容)
*参考記事:アルサロの歴史
https://gionchoubu.exblog.jp/32449517/